「医療安全 転倒・転落」の研修に思ふ

もう7、8年ほどにもなるでしょうか。
北海道看護協会札幌第一支部が独自に「医療安全委員会」を立ち上げました。
その初代委員長の経験を買われて(?)今週水曜日の退勤後、「医療安全 転倒・転落」をテーマに社内研修の講師をいたしました。

私どもの訪問看護ステーションでは医療安全委員会が活動しており、転倒・転落に限らず、どうしたら安全な訪問看護を提供できるかを考えています。
ただ、いくら委員会やそのメンバーが熱心でも、たったひとりの医療安全レベルが低ければ、全体がその水準に下がってしまいます。
ワイン樽に空いた穴からワインが漏れてなくなってしまうように。。。

同じ療養者のご自宅を見たとしても、「あれ?」と気づく看護師の能力には差があります。それぞれ環境の違う療養者のお家で転倒予防していくには、担当する看護師一人ひとりに高度なアセスメント力が必要となります。そして、アセスメントしただけでは転倒は減らず、具体的に予防行動がなされなければなりません。

では、具体的な予防行動とはどんなことでしょうか?
ひとつに、アセスメントシートでチェックされた項目に対処することです。例えば、筋力が低下しているのであれば、「おむつ交換の度にお尻を3回上げてもらう」という看護計画を立てるなど。
ふたつには、これまでに皆さんがどのような転倒事例を経験したか、それを伝えていただくことが対処の前提になるということです。例えば、箪笥の上の物をとるのに畳の巡目で転んだ、滑り止めのない靴下カバーを履いてきびすを返したら転んだ、スリッパをはきそこなって転んだetc…
スタッフが持っている事例だけでもたくさんあります。

現在、我がステーションでは転倒事例を鋭意努力募集中で、医療安全委員の案でトイレに転倒者の経験を書いてもらうシートが張ってあり、随時蓄積されています。たったひとりの看護師の経験かもしれませんが、経験から学び、それが組織のルーチンになることこそが重要だと考えています。

そのほか、文献的に、最近どのようなエビデンスがあるのかもお話しいたしました。
がんを患った方の中で、抗がん剤の治療を受けた方は、受けなかった方より骨折しやすいということが明らかになっています。これまで安静重視をしてきましたが、抗がん剤を受けていてもリハビリすることが大事なんですね。

加えて、5種類以上の薬を飲んでいる方は転倒しやすいと言われています。
多剤併用の弊害や薬の副作用については十分すぎるくらい確認しておくべきですね。

ここまで縷々書きましたが、私たち訪問看護師は、基本的に利用者や家族と良好なコミュニケーションを築くことが重要です。コミュニケーションは属人的にならざるを得ませんが、実は有事のとき普段のコミュニケーションが影響すると思って間違いないでしょう。
コミュニケーションの達人になりたいものです。

(照井)